実は、日本の歯科医療費は国際的に比較して決して安くはありません。先進諸国17ヶ国の中で比較してみると、1人当たりの医療費は6位、国民医療費に占める割合も6位、金額でいうと約2兆5000億円になり、1人当たり年間約2万円使っている計算になります。これは社会保険だけの計算ですが、国際比較からいうと決して少なくない数字といえるのです。 ところが、治療費単価を比較すると全く逆の結果が現れてきます。アメリカの治療費を日本の治療費と比べると、例えば、歯石取りで17倍、歯の詰め物で18倍程度と日本の何倍も高い治療費単価なのがわかります。逆にいうと、欧米と比べると日本の歯科治療費は格段に安いのです。 では、治療費単価が安いにもかかわらず全体の治療費が変わらないのは何故なのでしょうか?歯科治療に関しては格安の料金設定でも、定期的なメインテナンスをされずに再治療を繰り返している現状があるのです。「予防歯科」をおろそかにしている悪循環ともいえるでしょう。 ただこれは、患者さん側だけの問題ではなく、日本の保険制度の問題として予防を重要視した制度になっていない背景があります。歯科医院側が、保険診療で予防歯科に積極的に取り組むのが経営面から見て難しい部分があるのです。予防歯科を重視した政策になれば、全体としての医療費の縮減にも繋がります。国全体としての予防歯科を中心した診療体制が望まれているのです。