本来免疫反応は、体の中から有害な病原体を排除するためのものですが、その反応が過度になり、身体組織の傷害や疾患を引き起こす場合に、”アレルギー”という言葉が使用されます。アレルギーの症状は、皮膚や口腔粘膜など多種におよび、その原因物質は「アレルゲン」といいます。アレルギー疾患の中で、アレルゲンが金属である場合、金属アレルギーということになります。日常生活の中では、金属製品に触れる機会が大変多い為、アレルゲンとなる金属の種類を特定することは困難です。また最近では、歯科治療で使用される金属材料が原因で生じるアレルギー性接触皮膚炎も問題となってきています。
これらのことから、今回は歯科における金属アレルギーの方への治療の進め方について簡単にご紹介します。歯科で用いる金属材料がアレルゲンであると疑われる患者様へは、通常、以下の1~5の順に診察・診療を進めていきます。
- 金属アレルギー傾向を問診します。この段階で金属アレルギーかどうか判断がつかない場合は皮膚科医への受診を勧めることもあります。
- パッチテストをおこない、原因となっている金属の種類を特定します。
- お口の中を確認し、どこに原因となる金属が入っているかを診査します。この後、歯科医師がどのように治療を行うか計画をたて、患者さんにご説明します。
- お口の中にあるアレルゲンとなる金属を含む被せ物などを除去したのち、アレルゲンとならない材料で再度修復します。
- 経過観察と再発防止(ここが一番大事です。)
原因となっている金属を取り除いても長期間にわたり症状の変化を必ず観察します。また再発防止のため、その後に処置を追加しなければならない際は、使用する材料を慎重に選択します。
1991~1995年に、東京医科歯科大学歯学部附属病院歯科アレルギー外来を訪れた93人の金属アレルギーの患者さんのデータによれば、治療が終了し2カ月が経過した時点では、50%以上の患者さんに改善はみられました。それから2年経過すると58%に増えましたが、その一方で改善傾向がほとんどみられない方もいたとのことです。
このように金属アレルギーは、治療をしてもすぐに結果が得られないことが多いので、なるべく早期に発見することも大事です。「もしかして自分は金属アレルギーではないか?」と思われる方は、早めに歯科医院に相談に行ってみることをお勧めします。
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