放射線の持つ高い透過力やエネルギーは、農業や工業など、私達の生活に密接する実に多くの分野で利用されています。
これらの放射線を利用する時は、厳密な安全管理の下で注意深く行われているのです。
この放射線の利用分野で、特に有効に利用されているのが医療関連になります。
放射線は人体や物質を透過する際に、方向を変えたり、エネルギーを失ったり、別の放射線を生じたりする性質があります。
この性質を利用したのが、X線(レントゲン)の透過力を使って体内の様子を観察するのがX線診断なのです。
従来の一方向からX線を当てることで体の内部を観察するだけでなく、現在では様々な方向から人体のX線写真を撮影し、コンピューターで解析することによって、あたかも人体を輪切りしたように体内の様子を詳しく観察することができるCT検査も放射線の恩恵によるものなのです。
ガンの早期発見のために特に有効とされているのが、特殊な検査薬で「ガン細胞に目印をつける」という方法のPET検査です。
通常のガンは、実際に腫瘍ができたり、体に変化が起きてから見つかることが多く、ガン細胞の成長がある程度進んでからでないと発見しにくい病気といわれています。
しかし、PET検査では、検査薬を点滴で人体に投与することで、全身の細胞の内、ガン細胞だけに目印をつけることができ、専用の装置で体を撮影する事によってガン細胞だけを見つけることができるのです。
「陽電子放射断層撮影」という意味のPET検査により、従来の検査にくらべて、ずっと小さな早期ガン細胞まで発見することが可能になっているのです。