心臓には「右心房」、「右心室」、「左心房」、「左心室」という4つの部屋があり、全身から戻ってきた静脈血が右心房から右心室に流れ込み、肺できれいに酸素化された血液が左心房に戻り、そこから左心室を経て大動脈に送り出されて全身を巡るわけです。
つまり、血液は心臓と肺をよどみなく通過する事によって循環していきますが、この一方通行をコントロールするのが心弁膜の大切な役割なのです。
しかし、何らかの原因によって弁の開き具合が悪くなり、血液がスムーズに流れにくくなったり、あるいは弁の閉じ合わせが悪くなったりして血液が逆流してしまうことがあります。
これが「心弁膜症」といわれる病気なのです。
この「心弁膜症」の患者さんの歯科治療において、抜歯や口腔内の外科処置によって一時的な菌血症(細菌の血液内への侵入)を起こすため、実は感染性心内膜炎を発症するリスクがあります。
感染性心内膜炎とは、心臓の中にある弁、腱索、心臓の壁に細菌が付着して感染をおこすことです。
大変まれな病気ですが、細菌の付着場所が心臓の中ということで命に関わる危険な病気といわれています。
歯科衛生状態の良くない場合や長期間の透析患者の他に、HIV感染者や糖尿病患者などの免疫状態の悪い場合にも発症しやすいと言われています。
こういったリスクを避ける為に、日本の「心弁膜症」の患者さんの歯科治療では、一般的にAHA(アメリカ心臓協会)のガイドラインに従って、抗菌薬を抜歯前後に投与しています。
口腔内を不潔にすることによって、より細菌感染のリスクが増加してしまいます。
心臓弁膜症の患者さんに限りませんが、普段のブラッシングと定期的な歯科医院での専門的なクリーニングをされることをお勧めしおます。
口腔内の不潔な環境は、様々な疾患を発症させてしまうのです。