「後期高齢者医療制度」は、平成20年(2008年)4月からスタートした、新しい医療制度です。
この制度は、75歳以上の高齢者を「後期高齢者」と呼称し、一定の対象層として独立させて、新しい保険システムのもとに組み入れるもので、ちなみに65歳~75歳未満の高齢者は「前期高齢者」に分類されています。
ただし、65歳以上75歳未満でも、「寝たきり等の一定の障害がある」と認定された方は、原則としてこの新制度に含まれ、「後期高齢者医療制度」の被保険者となります。
以前の「後期高齢者」は、国民健康保険やサラリーマンの健康保険などの医療制度に加入しながらも、老人保健制度からも重ねて医療を受けられるという、いわば共同運営的な保険システムでしたが、「後期高齢者医療制度」の発足により一括した「後期高齢者医療制度」に加入することになったのです。
通常の社会保険(健康保険・介護保険等)は職域や住んでいる市町村が保険者となり、個別に内容が決まっています。
それに対して職域等に関わりなく、(原則として)年齢のみで対象者を一本化した唯一の医療保険が、この「後期高齢者医療制度」なのです。
新制度では、「後期高齢者」一人一人が被保険者となって、75歳以上の高齢者も、今後は市町村から支給される自分自身の被保険者証を一枚持つことになっています。
つまり、その保険料も、これら後期高齢者の方が「自分自身で」納付することになるわけです。
世帯単位で保険料が計算される国民健康保険とは違って、後期高齢者医療制度では「個人単位で」保険料が計算されるので注意する必要があります。
この後期高齢者医療制度がスタートした背景には、日本の国家財政が逼迫する中での「医療費の大幅な増加」があります。
平成27年度概算の国民医療費は、前年度比1.5兆円増・3.8%増の41.5兆円となっており、9年連続で過去最高額を更新しています。
このうち「後期高齢者」層の医療費は15.2兆円、医療費全体の36.6%を占めているとされていて、「後期高齢者」の一人当たり医療費は現役世代の5倍弱程度かかっているといわれているのです。
以前の制度では健康保険や国保など各々の保険制度の中に「後期高齢者」層が含まれていたことから、現役世代と「後期高齢者」との負担関係が曖昧になっていて、政府としても膨張する医療費の抑制がやりにくい構造が続いていました。
このような状況を受けて、国の医療制度改革の柱のひとつとして、この「後期高齢者だけを対象層として独立させ、医療給付を集中管理する」という新制度がスタートすることになったわけです。