「自分の意思に反して手足が小刻みに震える」、「手足の動きがぎこちなくなり、動作が遅くなる」などの症状を示す「パーキンソン病」は、日本では1000人に1人の割合で主に50~60歳代で発症すといわれています。
このパーキンソン病は、脳の中の神経伝達物質である「ドーパミン」を作って放出する「ドーパミン神経」が減少することで、体を円滑に動かすことができなくなる病気なのです。
震えや筋肉の強ばり、動きが鈍い、一定の姿勢を保てない、等がパーキンソン病の4大症状と呼ばれています。
このパーキンソン病は、神経の伝達が障害されて自分の意志で身体を円滑に動かすことができなくなることで、口腔周辺にも様々な症状を現します。
無意識に行う運動として、口をもぐもぐさせたり、舌を出したり唇を常になめ回したりする不随意運動の事をオーラルディスキネジアといいますが、この症状がパーキンソン病の治療薬によって起こるケースがあります。
また、身体を円滑に動かすことができないパーキンソン病の人では、飲み込む機能も円滑に行われないので、嚥下運動も障害されます。
その為、食べ物を飲み込むのに時間がかかったり、食べ物を誤って気道に飲み込む「誤嚥」を起こしたりする嚥下障害が多くなってきます。
パーキンソン病の患者さんは、口腔内の筋機能の低下に伴って唾液が分泌しにくくなったり、治療薬の副作用に伴う唾液の分泌抑制が起こるので、口腔内が非常に乾燥する口腔乾燥症になってしまいます。
口腔内が乾燥することによって、口腔粘膜の抵抗力が弱まるだけでなく、少しの刺激で簡単に傷がついて、治りが非常に悪くなってしまうのです。
歯科治療において、パーキンソン病によって身体の震えが強度な場合や、不随意運動が発生するオーラルディスキネジアが強い場合には、歯科治療が困難ですので症状が安定するまで待ちましょう。
また、嚥下障害が強度の場合でも、うがいができる状態まで機能訓練が進んでから歯科を受診するべきです。
パーキンソン病の治療の為に服用薬の中には、歯科治療時に使用する麻酔薬で注意を要するケースがあります。
歯科を受診前にはパーキンソン病の治療状況と、歯科の治療のときに注意すべき点等を記載した紹介状を主治医の医師に書いてもらうようにして下さい。