年齢を重ねるにつれ、お口の中の状態も色々と変化します。しかしながら、高齢者のお口の機能の低下は様々です。歯の喪失や、入れ歯や被せ物の不適合による噛む機能の低下。唇の閉じる力、舌の運動など咀嚼した食べ物を喉の奥に送り込む機能の低下。また、食べ物を飲み込み食道に送り込む機能の低下など、どのような機能の低下がみられるかにより、食事に対しそれぞれ異なった工夫が必要となります。
普通の食事が食べにくくなると、食材を細かく刻むことも多いのですが、最初から食べ物が口の中でバラバラになっていると、舌の上で塊を作ることが難しくなり、むせたり、誤嚥に繋がったりします。
細かく刻んだ食事は、噛み砕く負担を減らすことができるので、高齢者にとって食べやすい食事と思われがちですが、飲み込む機能の低下した人には誤嚥性肺炎を引き起こす危険な食事となることがあります。
また高齢者は、唾液の分泌量も減少傾向にありますが、噛むことが唾液の分泌を促し、舌の上では甘味や塩味など食事の旨味を感じることができます。しかし刻んだ食事は、噛む行為をある程度省いてしまうため、唾液の分泌量も減り、食事の喜びを奪う一因にもなります。
よく噛み味わって食べることは、生きる喜びです。お口の機能が低下した人は、その人の状況に合わせて、噛みやすい柔らかさや、舌でつぶせる程度の柔らかさ、むせやすい人にはとろみをつけた食事とするなど、工夫次第で最後まで無理なく口から食べられるようにすることが可能です。これからの歯科医療は歯の治療だけでなく“食べるサポート”も提供します。
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