医学の進歩とともに人間の寿命は大きく延びました。
特に日本は世界有数の長寿国でもあり、この事は同時に深刻な高齢者問題と向き合わなければいけない状況を意味しています。
年齢を重ねるごとに、当然の事ながら「持病」ともつきあわなければならず、高齢者になるほど、毎日何らかのお薬を服用される方が多くなっています。
この「持病」は症状の低いものから大きいものまで色々あり、代表的なものとしては高血圧症などが挙げられます。
高血圧症はお薬などでコントロールされている場合、歯科用局所麻酔を打った直後は一時的に血圧が上昇しますが、殆どの歯科治療において大きな問題とはなりません。
しかし、収縮期血圧が160mmHgを超えると、抜歯後に血が止まりにくいなどの症状が出るケースがあります。
降圧剤などのお薬を飲まれて入る方は、普段から習慣的に自宅で血圧を測定されていると思いますが、歯科受診日に血圧測定をされて、平常より高目の数値であった場合は必ず担当医師に申告するようにして下さい。
降圧剤を服用して正常範囲にコントロールされている場合には、高血圧薬との相互作用に注意して歯科治療を行っていきます。
一般に降圧剤は朝は必ず処方されていることが多いので、歯科治療は午前中が望ましいとされています。
治療開始前には必ず、当日の血圧の申告、または測定して、その日の降圧剤の服用の確認を行います。
もし、高血圧の患者さんが血圧のコントロールをされていない場合には、コントロールが良好になるまで歯科治療を差し控えます。
また、治療時の痛みによって血圧の上昇が予測されるケースでは、鎮痛剤などの薬物療法を原則としています。
高血圧症に限りませんが、歯科医の立場として全身疾患を持つ患者さんに対しては主治医と連携しながら、より安全に治療を進める事が求められているのです。