近年、日本国内でもたばこを吸わない人が喫煙者の煙にさらされる「受動喫煙」を防ぐため、分煙への取り組みが行われるようになってきました。神奈川県では、「受動喫煙防止条例」が制定され、全国に先駆けて規制が行われています。
喫煙者本人が吸う、いわゆる「主流煙」には、発がん性物質が約70種類とニコチンとが含まれています。一方、火のついたたばこの先から出る煙である「副流煙」にも有害物質が含まれ、それらは主流煙の数倍にもなるといわれています。たばこを吸っていないにもかかわらず、この副流煙を吸い込むことを受動喫煙といいますが、受動喫煙が成人の健康に及ぼす影響で確実とされているのは、肺がん、虚血性心疾患、脳卒中の発生率の増加です。
口腔への影響としては、小児の齲蝕のリスクが2倍近くも増えることがわかっています。成人においては、歯周病や歯の喪失のリスクを30%高めることも分かってきました。さらに、喫煙により服や髪の毛に付着した有害物質や、喫煙中に吐く息に含まれる有害物質を吸ってしまう「三次喫煙」にも注意が必要です。
さらに近年、海外では「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」に示されているように、受動喫煙の健康被害は明白なものであるとして、「分煙」だけでなく「全面禁煙」の実施が進んでいます。しかし日本での禁煙化は、2016年に実施された厚生労働省の一般職場に関する調査で、「敷地内全面禁煙が14.0%」「建物内禁煙が39.9%」と、約半数しか進んでいないのが現状です。
政府は、2020年に東京で開催される「第32回オリンピック競技大会」(東京オリンピック)ならびに「第16回夏季パラリンピック」(東京パラリンピック)に向け、受動喫煙防止対策を強化すると発表しています。どこまで禁煙化が進むのか、歯科業界も注目するところです。
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